Misfortunes never come single2011/08/28 20:44

【不幸は続いてやってくる】 <-- 英語のことわざです(*1)

凄絶な生還 -うつ病になってよかった-  竹脇無我著 マキノ出版 2003年8月

「凄絶」を”ソウゼツ”と読んでしまった。”セイゼツ”と読むのが正しい。意味は「ゾッとするほどものすごいさま」ということです。

本書は8月21日に67歳で没した俳優・竹脇無我氏のうつ病闘病記です。
氏の自己分析では、「自分が思いどおりにならないことを思いどおりにしようとしてうつ病になった」としています(73ページ)。一例として、演じる役はほとんど育ちのいいエリートの役ばかりで自分の”素地”とのギャップが大きく自然に演じられなかったとあった(64ページ)。自然でいいなら誰でもできるぞとつっこみたくなるが、役者業が体にあっていなかったということかもしれない。
それにしても10代後半に家族に襲いかかる不幸は凄まじい。これだけでも私ならおかしくなりそうだ。
「あとがき」を書いた精神科医によれば、「躁鬱病は遺伝による素因が大きい」ということです。読んでいて、うつ病の素地があって、アルコールがそれに火をつけた、という感じがしました。
ご冥福をお祈りします。

本書から氏の人生の特異点を抜き出してみました。
16歳 父親(49歳)が自殺
16歳 俳優業開始
17歳 次兄(18歳)が脳腫瘍で死亡
21歳 長兄(27歳)が失明
26歳 結婚
27歳 長女誕生
29歳 次女誕生
30代終頃から 妻以外の女性と真剣な恋愛、エネルギーを使い果たした恋愛、自分のキャパシティを超えた恋愛
40歳 妻子と別居
50歳 溺れるように酒を飲む、死にたいと思うようになる
50歳 体が尋常ではないだるさ、コップが鉛のように重い、肝機能をはじめ検査は正常
52歳 躁鬱病で入院半年間
53歳 離婚
55歳 アルコール中毒で倒れ一ヶ月入院、糖尿病併発
55歳、56歳 仕事も酒も1年間休む

58歳 本書出版
67歳 小脳出血のため没
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*1: 出典は”英辞郎