that's about normal2009/10/03 19:08

Orion in Gas, Dust, and Stars (from NASA Archives)
【まあ、大体そんなもんですよ】

『ゆらぐ脳』 池谷裕二/木村俊介著 文藝春秋 2008年8月
を読んでいます。

池谷裕二氏は、専門分野は脳の神経回路で、2004年、コロンビア大学留学中に世界最高峰の科学雑誌・サイエンスに論文が掲載された、最前線の脳研究者の一人です、と本書の”はじめに”で紹介されていました。

脳研究のお話もさることながら、研究の仕事の世界や姿勢がとても参考になります。例えば、
「科学は政治や流行に左右される人間的営み」
「時間をかけすぎるくらいでなければ研究は成功しない」
「アイデアの多くはコミュニケーションからしか生まれない」
等々です。

それはともかく、
「同時に活動する神経細胞のコンビネーションは宇宙全体に存在する原子の総数をはるかに超えるほどあるけれど、今の時点で、最高40%の確率で予測できている」(本書67ページ)
とありました。

”宇宙全体に存在する原子の総数”が、もう常識よ、ってな感じで使われていますね。

理科年表あたりに載っているのかもしれない、図書館へ、とも思ったけれど、面倒なので、とりあえず、ググってみました。

ありましたね、いろんなサイトで。計算している人がいました。このあたりは、みなさんでググっていただくとして、私の見た範囲では、宇宙全体の原子の総数は、10^80個から10^100個という値でした。それなりに、納得いく説明もありました。

正直なところ、こんなもんか、と思ったわけです。
宇宙全体に存在する原子の総数もやっぱり有限ということですよ。

2進数にしたら何バイトに収まるか計算しようとしたけど、私の計算機では Over flow でした。

タイトルは、『まあ大体そんなもんですよ』

写真は、NASA が Astronomy Picture of the Day Archive というサイトで、2009年9月29日に公開した写真です。
http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/archivepix.html

You have no free will, part 12009/10/09 22:04

【人間には自由意思はありません(その1)】

最近、図書館がとても便利になりました。自宅から蔵書の検索、予約ができて、さらに、用意できましたので取りに来てくださいとEメールで連絡まで来る。紙ベースでも昔からあった機能だけれど、自宅でキーボードちょこちょこ叩くだけですむのとは雲泥の違いがある。コンピュータ社会様々ですね。

近所の図書館のWebサービスで、脳科学者・池谷裕二氏の関連の著作を検索して、貸し出されていなかった以下の図書を借りた。

アイデアの生まれるところ 上条桂子編 大和書房 2006年12月

この本は、さまざまな業界で活躍するクリエータと呼ばれる方々にインタビューして、アイデアに対する考え方やアイデアを生み出すための方法を尋ねたものです。池谷氏は、アイデアが生まれるときに脳の中ではどんな作業が起こっているか、アイデアを生まれやすくする方法などを語っています。

池谷氏は記者にいいます。「今ノートにメモを取っていますよね。それは自分の意志で書いています?」
記者:はい、意思で書いています。
池谷:実は、人間には自由意思はないんですよ。・・・

池谷氏はここで、「人間には自由意思がない」という証明をしたという、ベンジャミン・リベットが1980年代に行った実験を紹介しています。

アイデアと脳の関係は脳のいろいろな性質がわかっていないと理解できないようです。

To be continued

You have no free will, part 22009/10/10 21:01

【人間には自由意思はありません(その2)】

アイデアの生まれるところ 上条桂子編 大和書房 2006年12月
より、脳科学者・池谷裕二氏の語る脳の話 その2 です。

人間には自由意思がない、それは脳は決めるということです。
その証明をした、ベンジャミン・リベットという人の実験はつぎのとおりです。

・人を椅子に座らせてボタンを握らせる。
・押したくなった時に、「押したくなった」と言ってから押す。
・その間、脳の活動を測っている。
というものです。

その結果、わかったことは、
①脳が活動する
②脳の活動の後1秒くらい後に押したくなる
というものでした。

研究者達は、別室で脳の活動状態をモニタでみているわけだ。脳のある部分が赤くなると、”もうすぐこの方は <押したくなった> と言いますよ”という話しをしながら.ですね、”ほうら、言ったぁ”という感じでしょうか。

脳の活動が先にあるけれど、それは人間にはわからない。
人間は脳の活動のとおりに動くので、”人間には自由意思はない”ということになるようです。

つづく

You have no free will, part 32009/10/11 21:47

【人間には自由意思はありません(その3)】

アイデアの生まれるところ 上条桂子編 大和書房 2006年12月
より、脳科学者・池谷裕二氏の語る脳の話、その3 です。

正直、人間には自由意思はないということになったけれど、無意識であろうと”自分の脳”は”自分”そのものなんだから、自分の意思ということでいいんじゃないの、と思いました。

けれども、さらに読み進めると、この二つは別と考えた方がいいのがわかりました。無意識下と意識下はわけたほうがいい。

さっきの話しで言うと次の3段階があります。
①脳が押すという意思を決める(無意識)
②自分が押したいと思う(意識)
③指が動く(行動)

この②と③の間に0.2秒から0.3秒のタイムラグがあるというのです。
これが”人間に認められた権利”だというのです。

脳が押す押さないの意思を決める、だから脳が作り上げた意思にそって、人間は押すということを意識するのだけれど、”いやだ、押さない!”ということもこの0.2秒から0.3秒の間にできるわけです。

つまり、人間には拒否権がある、ということです。

疲れたので次回に続く。

You have no free will, part42009/10/12 22:26

【人間には自由意思はありません(その4)】

アイデアの生まれるところ 上条桂子編 大和書房 2006年12月
より、脳科学者・池谷裕二氏の語る脳の話、その4 です。

脳の自由意思に対して人間には拒否権がある、ということでした。

この実験のボタンを押すか押さないかというような場合は、研究者から「押してくれ」と頼まれて実験室へ来ているわけだから、「いやだ押さない」ということにはならないわけです。
けれども、脳の意思が”女性のお尻をさわれ”というような場合はどうでしょうか?

以下、本文からの抜粋です。

「例えば、痴漢を想定してみましょう。触りたいという感情が生まれるのはオートマティックだからしようがない。そこで、触っちゃうかどうか。触りたいけれど止めれば良いんです。それができなかったら、やっぱりそれは犯罪です。」

この本の119ページにアインシュタインの話があります。この部分は池谷氏の話ではありません。編集者(インタビュア)が調べたのでしょう。
アインシュタインは、洗濯用石けんで顔を洗い、ぞうきんで顔を拭き、灰皿で飯を食った、とあります。

脳の意思のままに行動するとこうなるんですね。

Brain cells are below the worst. 脳細胞って、超最低

You have no free will, part 52009/10/13 23:13

【人間には自由意思はありません(その5)】

アイデアの生まれるところ 上条桂子編 大和書房 2006年12月
より、脳科学者・池谷裕二氏の語る脳の話、その5 です。

脳の自由意思というのはどうやって決まるのか、という問題です。
これがもう、実は、なんとも、でたらめ、ということなんです。

神経細胞が意思を決めるというのは、たぶん、どこととこの神経細胞がどの程度の強弱でつながるかで脳の意思が決まるということだと思います。神経細胞をつなぐのは電気信号と化学物質です。どの細胞にどの程度の電気が現在貯まっているのかで信号の大きさや流れる方向が違うことになるわけで、この違いで脳の意思が決まるということでしょう。

つまりは、その瞬間の脳の状態によって意思が決まるということになります。

これを『揺らぎ』といっています。
専門用語はわからないけれど、”揺らぎ”をネット辞書で引くと、
flicker(点滅ライト、ちらつき)
shimmering (チラチラ光る)
fluctuation(変動)
とありました。雰囲気としてはわかりますね。

以下、本文から抜粋します。

「神経の膜に溜まった電気も、たくさん溜まったり、そうでなかったりと自然にゆらぐ。それはほとんとランダムウォーク。乱数表で決めているようなものに近いんですね。つまり私たちの脳はゆらいでいて、その瞬間の脳の状態で意思が決まっちゃうんです。 (中略) 一見知的な行動も意外と根拠がないものなんです。」

無意識下のでたらめさを制御するのが意識としての人間ということになりますね。

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The candle flame flickers and wanes, just like my brain cells.
ろうそくの炎が揺らめきながら消えてゆく、ああ、私の脳細胞と同じだなあ

You have no free will, part 62009/10/14 00:44

【人間には自由意思はありません(その6)】

アイデアの生まれるところ 上条桂子編 大和書房 2006年12月
より、脳科学者・池谷裕二氏の語る脳の話、その6 です。

脳科学者は、脳のゆらぎが意思になり、意思を実行するのが人間、というものなので、人間の意思で”アイデアを出す”ことはできないといっています。”アイデアを絞り出す”というのは無駄な努力だということですね。

以下、本書を引用します。
「だから、私たちにできることは、基本的に『脳をひたすら揺らがせて待つのみ』なんです。そして、このアイデアは浮かんだけれどこれはダメ、これも使えないって次々に否定する。そして最終的にどれを選ぶかは、その人のセンスなんですね。」

さらに次のようにも言っています。
「アイデアは待っているしかない。でも、待ち方がある。それは脳を積極的に揺らがせるんです。」

”脳を揺らがせる”方法には次のようなものがあるといっています。
・シチュエーションを変える(同じシチュエーションだと脳の揺らぎがワンパターン化する)
・動く(場所が変わると脳が活動を始める、歩く、通勤など)、但し、思考を停止してはダメ、歩き回りながら考えること。
・寝る(寝る直前に情報をとりいれ、夢の中で熟成させる)

ずいぶん勉強になりました。 一読をお薦めします。

Walking makes new ideas.

maybe2009/10/31 00:40

【たぶんそのとおりだと思います】

リスクに関する人類の経験知は次のとおりだそうです。

大きなトラブルに遭遇したとき・・・、
人は日々やっていることしかできない。
いつもやってないことはたぶんできない。
日々やっていることですらうまくできない。

だから・・・、
対応計画を立てたら日々の活動の中にそれを組み込むことが必要になります。